結婚写真の著作権と、お客様が使える範囲

写真の著作者は原則として撮った人で、お客様に渡すのは「データ」と「使ってよい範囲の許諾」です。個人のSNS、フォトブック、披露宴での上映、事業での利用の境目を、条文に引き直して整理します。

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「個人利用は自由」とだけ書くと、フォトブックの注文や友人の再投稿が許されるのか、読み手ごとに結論が分かれます。個人のSNS投稿は、法律上の私的使用の範囲にも入りません。

このページの要点

  • 写真の著作者は原則として撮影した人。被写体や、希望を伝えただけのお客様は著作者にならない。会社が著作者になるのは職務著作の四要件がそろうとき(著作権法2条1項2号・10条1項8号・15条1項)。
  • 私的使用の複製は「家庭内その他これに準ずる限られた範囲」。SNSへの投稿は公衆送信で、契約で許諾しておく必要がある(30条1項・23条1項・63条)。
  • 商業利用は、目的・主体・対価の三つの軸で定義し、含まれる例と含まれない例を添える。加工は軽微な範囲を許諾し、著作者人格権は行使しない約束にする(20条)。
  • 著作権を譲渡する場合は、27条・28条を特掲し(61条2項)、著作者人格権は不行使で補い(59条)、撮影者の実績掲載を逆向きの許諾として決める。

結論:写真の著作者は原則として撮った人。お客様に渡すのは「データ」と「使ってよい範囲の許諾」

前撮りやフォトウェディングのデータを受け取ったお客様は、「自分たち二人の写真なのだから自由に使える」と考えるのが自然です。一方、撮影する側には、「写真には著作権があり、無制限には使わせられない」という感覚があります。この二つの感覚のずれが、納品後の争いの出発点になります。「SNSに載せたら削除を求められた」「フォトブックを注文したら断られた」「知人の美容室が宣伝に使いたいと言っている」といった場面です。

ずれを減らす近道は、権利の話を二つに分けて考えることです。一つは「写真の著作権が誰のものか」、もう一つは「お客様が何に使ってよいか」です。多くのサービスは、著作権を撮影する側に置いたまま、お客様には一定の範囲の利用を許諾する形を取ります。そのうえで、範囲を超える利用(事業での利用など)は、別の条件で許諾します。この形そのものは、条文に沿った自然な設計です。問題は、「一定の範囲」を契約書にどこまで具体的に書くかにあります。

このページは、一般的な条文と書き方の整理です。個別の撮影サービスへの当てはめは、プランの内容、撮影者との契約、申込みの経緯によって異なります。撮影者から撮影会社を経てお客様に使わせる許諾の連鎖は撮影者に撮影を任せる契約で、納品物の種類と引渡しは撮影データの納品と検収で、実績として写真を載せる同意は撮影した写真を実績として載せる同意で扱います。ここでは、お客様がデータをどう使えるか、という一点に絞ります。

先に結論を並べます。

  • 写真は「写真の著作物」で、著作者は原則として撮影した人。被写体になったお客様は、著作者にはならない(著作権法2条1項2号、10条1項8号)。
  • 著作権は登録しなくても生じる。納品や表示の時点で権利が成立しているので、「著作権の表示がないからフリー素材」という扱いにはならない(同法17条2項)。
  • 個人のSNS投稿は、法律上の「私的使用」では足りない。私的使用のための複製は「家庭内その他これに準ずる限られた範囲」に限られ、公衆への送信は含まれない。SNSへの投稿は、契約で許諾しておく必要がある(同法30条1項、23条1項、63条)。
  • 許諾の範囲は、人(誰が)・場面(どこで)・方法(どう使う)で書く。「個人利用の範囲」とだけ書くと、フォトブック、披露宴での上映、友人のシェアが入るのか読み手ごとに分かれる。
  • 事業での利用(商業利用)は、定義と料金の考え方を先に示す。定義が曖昧なままだと、お客様の個人のSNS投稿まで規約違反と言われかねない。
  • 著作権を譲渡する場合は、翻案権等(27条・28条)を特掲し、著作者人格権は不行使の約束で補う。撮影者の実績掲載の扱いも、逆向きの許諾として決めておく。

このページを読む前に、手元に置いておくもの

  • 申込書、利用規約、契約書、重要事項説明書のうち、写真の権利と利用に触れている部分(書類ごとに言い方が違っていないかを見る)
  • 撮影者と撮影会社の間の契約(著作権の置き場所と、お客様に許諾してよい範囲)
  • お客様が納品後によく尋ねる使い方の一覧(SNS、フォトブック、年賀状、披露宴の上映、勤務先、友人への共有 など)
  • 商業利用として別の許諾を要する場面と、その場合の料金や手続の案内

写真の著作者は誰か:撮影者か、撮影会社か、お客様か

著作権法は、著作物を「思想又は感情を創作的に表現したもの」と定め(2条1項1号)、著作者を「著作物を創作する者」と定めています(同項2号)。写真は、同法10条1項8号に「写真の著作物」として例示されています。構図の決め方、光の向きと強さ、撮影位置、シャッターを切る瞬間、被写体のポーズの付け方などに撮影者の工夫が表れていれば、創作性が認められます。ありふれた記録写真でも、撮影者の選択が入っていれば著作物にあたり得るので、前撮りやロケーション撮影の写真が著作物にあたることは、通常は問題になりません。

では、著作者は誰でしょうか。原則は、実際にシャッターを切るなど創作的な表現をした人です。お客様が「こういう雰囲気で」「この衣装でこの場所で」と希望を伝えたとしても、希望やアイデアを述べただけでは、通常は創作に関与したとはいえず、お客様が著作者になるわけではないと考えられています。被写体になったことも同じです。お客様が写っていても、著作権は撮影者側に生じます。写っている人の容貌を無断で撮られたり公表されたりしない利益は、著作権とは別の、人の人格的な利益として保護される、という考え方があります。これは条文に書かれた権利ではなく、一般的な考え方です。このページでは条文のある著作権を中心に扱い、後の節で掲載の同意と結び付けて触れます。

撮影会社が自社名義で写真を出している場合は、会社が著作者になる場面があります。著作権法15条1項は、法人等の発意に基づき、その業務に従事する者が職務上作成する著作物で、法人等が自己の著作の名義の下に公表するものの著作者は、作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とすると定めています。この「職務著作」が成り立つには、条文上、次の四つがそろう必要があります。

  1. 法人等の発意に基づくこと(会社が撮影を企画し、命じていること)
  2. 法人等の業務に従事する者が作成すること(従業員に限らず、実態で判断される)
  3. 職務上作成すること(職務として撮ったこと)
  4. 法人等が自己の著作の名義の下に公表すること(会社のブランドの作品として出していること)

外部のフォトグラファーに個別に依頼して撮ってもらう場合は、「業務に従事する者」にあたるかどうかが問題になります。あたらなければ、撮影した個人が著作者で、会社には著作権が当然には生じません。この場合、会社がお客様に写真を使わせるには、撮影者から権利の移転か、利用の許諾を受けておく必要があります。ここを決めていないと、お客様に許諾したつもりの範囲が、実は撮影者から許されていなかった、という事態になります。その場合の連鎖の組み立ては別のページで扱います。

もう一つ、著作者が誰かを推定する規定があります。著作物の原作品に、または公衆への提供・提示の際に、著作者名として通常の方法で表示されている人は、その著作物の著作者と推定されます(著作権法14条)。写真に撮影者のクレジットを入れる運用は、この推定を働かせる意味もあります。ただし推定にとどまるので、実際に別の人が撮っていれば覆ります。

写真の著作者を考えるときの目安(一般的な整理)

立場著作者になるか考え方
実際に撮影した個人の撮影者原則としてなる創作的な表現をした者(2条1項2号)。ただし、会社の職務著作が成り立つ場合は会社
撮影を企画し、自社名義で公表する撮影会社職務著作の4要件がそろえばなる発意、業務従事者、職務上の作成、会社名義の公表(15条1項)。契約で別段の定めがあればそれに従う
外部に委託した撮影者原則として撮影者。会社の職務著作が成り立つかは実態による委託の実態で判断される。権利を会社に移すか、許諾を受ける契約が前提になる
希望やポーズを伝えたお客様通常はならないアイデアや希望の提示にとどまれば、創作的な表現への関与とはいえない
お客様自身や同行者が自分のスマートフォンで撮った写真その撮った人本サービスの写真とは別の写真。撮影会社の許諾は要らない

お客様に許諾する範囲:三つの層で考える

お客様にどこまで使わせるかは、利用の「範囲」を三つの層に分けて考えると整理しやすくなります。

第一の層は、お客様自身と家族・親族・親しい友人の間で眺め、共有し、保存する使い方です。データをメッセージやクラウドで送る、プリントして飾る、といったものです。著作権法30条1項は、著作物を「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること」を目的とするときは、使用する者が複製できると定めています。この範囲の複製は、条文上も許されます。

第二の層は、個人のSNS、ブログ、個人のウェブサイトへの投稿です。ここで注意したいのは、30条1項が認めるのは「複製」であり、インターネット上で不特定多数が見られる状態にする「公衆送信」(著作権法2条1項7号の2、23条1項)は、私的使用の範囲に含まれないことです。つまり、SNSへの投稿は、法律上の私的使用の規定だけでは正当化できず、著作権者の許諾が必要になります(63条1項)。契約書にSNS投稿の許諾が書かれていなければ、お客様は、善意でSNSに載せるだけで許諾の範囲外の利用をしたことになりかねません。多くのサービスが「個人のSNS・個人のウェブサイトへの投稿は自由」と明記しているのは、この理由によります。

第三の層は、事業や営利に関わる利用です。お客様の勤務先や店舗の宣伝、ブランドとの提携投稿、商品販売の広告などです。この層は、個人の記念としての利用とは性格が異なるため、別のライセンスにするのが通例です。ただし、第二の層と第三の層の境目を決めておかないと、争いが生じます。この点は後の節で扱います。

許諾を受けた人は、その許諾に係る利用方法及び条件の範囲内で、著作物を利用できます(著作権法63条2項)。範囲外の利用は、許諾の範囲を超えた利用として、著作権の侵害にあたる可能性があります。したがって、契約書の許諾の範囲の書き方が、そのまま利用できる範囲の境界になります。範囲を狭く書けばお客様の自由度が下がり、広く書けば撮影する側のコントロールが弱まります。どの場面を許諾し、どの場面を別の許諾にするかを、先に決めておくことが大切です。

著作権の置き場所と、お客様への許諾の型

私的利用の許諾型

著作権は撮影する側に残し、お客様には個人としての利用を許諾する

  • 個人のSNS、家族・親族間の共有、プリント、フォトブックなどを列挙して許諾する
  • 事業での利用は含めず、必要なら別のライセンスにする
  • 撮影者への報酬や実績掲載の運用が崩れにくい

広い許諾(ライセンス)型

著作権は撮影する側に残し、事業での利用まで含めて許諾する

  • 上位のプランや追加料金で、事業利用を含む範囲を許諾する
  • 許諾の目的、媒体、期間、地域を特定して書く
  • 再許諾や第三者への提供の可否は、別に明記する

著作権の譲渡型

著作権そのものをお客様に移す

  • 翻案権等(27条・28条)を特掲しないと、譲渡した側に留保されたと推定される(61条2項)
  • 著作者人格権は譲渡できないので、不行使の約束で補う(59条)
  • 譲渡後に撮影者が実績として使えるかを、逆向きの許諾として決める

三つの型は排他的ではなく、プランによって使い分ける例もあります。どの型でも、書類ごとに言い方が違うと、読み手が最も都合のよい書類を指して争いになります。

境界になりやすい場面:フォトブック、披露宴の上映、友人のシェア、事業での利用

「個人利用の範囲」と書いてあっても、実際に問い合わせが来るのは境界の場面です。代表的なものを、条文に引き直して並べます。

場面ごとの、条文上の位置づけと契約への書き方(一般的な整理)

場面条文上の位置づけ契約への書き方の例
家族・親族・親しい友人へのデータの共有「家庭内その他これに準ずる限られた範囲」の私的使用の範囲(30条1項)。複製は可能だが、範囲が不明確な場合がある「ご自身、ご家族、親族及び友人との共有」と、人の範囲を書く。友人が再投稿することを許すかを別に決める
個人のSNS、ブログへの投稿公衆送信にあたり、私的使用の規定の外(23条1項)。許諾が必要「個人のSNS、個人のブログ及び個人のウェブサイトへの投稿を許諾する」と明記する
フォトブック、プリント、年賀状などを外部の業者に注文複製を業者が行う。30条1項は「使用する者が複製する」ことを想定するので、業者への注文は契約で明示しておくほうが安心「印刷業者への注文を含む」と書く。印刷の用途は個人の記念用に限る、と合わせて書く
挙式・披露宴・二次会での上映公に上映する場合は上映権の問題になる(22条の2)。参列者の人数や会の性質によって、私的な範囲といえるかが分かれる「挙式・披露宴・二次会等の私的な催しでの上映」を許諾する、または許諾しない、と明記する
式場・衣装店・美容院などへの提供と、その宣伝利用お客様がこれらの事業者に写真を渡して宣伝に使わせることは、事業者による事業での利用手配先の掲載は、撮影会社の掲載とは別の同意で扱う。お客様が自分で手配先へ提供する場合の扱いは、別に書く
勤務先、店舗、プロフィール、名刺での利用事業での利用にあたる可能性が高い商業利用として、別のライセンス、または追加料金の対象とする。個人の就職活動用の利用は含めるかを決める
ブランド提携の投稿、アフィリエイト、収益化されたアカウントでの投稿営利目的の利用にあたる商業利用の定義の中に例示する。無償の紹介と、対価を得る投稿を区別する
雑誌、ウェブメディア、コンテスト、展示への提供第三者への提供と公表になる。公表の条件は撮影者・撮影会社の許諾による事前に申し出て承諾を得る、と書く。クレジット表示を条件にするかも決める

表のうち、特に対応が分かれるのは「外部の業者への注文」と「披露宴での上映」です。前者は、フォトブックの会社にデータを送って印刷してもらうことが、お客様自身の複製といえるのかという問題があり、後者は、参列者に向けた上映が私的な範囲を超えるのではないかという問題があります。どちらも、法律の解釈に争いの余地があり得る部分なので、契約書で「含む」または「含まない」を書いてしまうのが、争いを避ける方法です。含めるなら、用途を個人の記念用に限定し、販売や配布は含めない、と書き添えます。

条文例写真データの権利と利用の許諾(書き方の例・一般的な例)

  1. 本件写真の著作権は、当社に帰属する。当社は、本件写真を撮影した者から、本件写真についてお客様に許諾する権限を得ている。
  2. お客様は、本件写真のデータを、次の各号の範囲で、個人の記念として利用することができる。
    (1) お客様ご自身、ご家族、親族及び友人との共有
    (2) 個人のSNS、個人のブログ及び個人のウェブサイトへの投稿
    (3) プリント、フォトブック、年賀状その他の記念品の作成(印刷業者への注文を含む)
    (4) 挙式、披露宴、二次会その他の私的な催しでの上映
  3. お客様は、前項の範囲で、本件写真のトリミング、明るさ・色調の調整、文字やスタンプの追加その他の軽微な加工を行うことができる。当社は、本件写真を撮影した者との契約により、その者がお客様等に対してこの範囲の加工について著作者人格権を行使しない旨の約定を得ている(当社が著作者である場合は、当社はこれを行使しない。)。
  4. お客様は、本件写真を、自己又は第三者の事業、営業、広告宣伝、販売促進その他営利を目的として利用してはならない。これらの目的で利用するときは、事前に当社に申し出て、当社が別に定める条件でライセンスを受けるものとする。
  5. お客様は、本件写真の著作権その他の権利を、第三者に譲渡し、又は再許諾してはならない。

日数・金額・期間などの数値は書かず、必要に応じて個別条件表に書きます。第2項の列挙は、運用の実態に合わせて増減します。

商業利用の定義と、加工・AIによる変換・再配布の扱い

「商業利用」は、規約で最も揉めやすい言葉の一つです。「営利目的に関連する利用」とだけ書くと、お客様の個人アカウントが少し収益化されていたり、美容やファッションの関係者であったりするだけで、規約違反の疑いが生じます。逆に、狭く書きすぎると、お客様が写真を店舗の広告に使っても止められなくなります。定義は、次の三つの軸で組み立てると、読み手に伝わります。

  • 目的:収益を得る、集客する、商品やサービスを売る、広告や販売促進に使う、ブランドの価値を高める、といった目的が中心かどうか。
  • 主体:事業者や法人、個人事業主として利用するのか、個人の資格での利用か。
  • 対価:その利用によって、広告収入、報酬、商品やサービスの提供、投稿の依頼など、対価を受けるか。

三つの軸に加えて、「例示」を添えると、争いが減ります。例示は、含まれるもの(店舗や事業の宣伝、広告、商品の販売ページ、対価を受ける依頼に基づく投稿、アフィリエイト)と、含まれないもの(個人の記念としての投稿、結婚の報告、友人への共有)の両方を書きます。含まれるものを書くより、含まれないものを書くほうが、お客様の安心につながります。

書き方の例(一般的な例) 商業利用の定義

定義の組み立て

よくある書き方「営利目的に関連して利用することをいう」と、一文で書く
整えた書き方目的・主体・対価の三つの軸で書き、含まれる例と含まれない例を添える

理由一文の定義は、読み手によって範囲が変わる。例示が多いほど、判断の幅が小さくなる

判断者

よくある書き方「当社が商業利用と判断した場合」
整えた書き方「次の各号のいずれかに該当する場合」とし、迷うときの事前確認の手順を書く

理由判断を一方的に委ねる書き方は、後で争いになりやすい。事前確認の手順があれば、お客様も動きやすい

料金の予告

よくある書き方「別途ライセンス料を要する」
整えた書き方「事前に提示する料金表、または見積りによる」とし、料金の考え方(期間・媒体・地域)を示す

理由金額を契約に書かなくても、決め方を示しておけば、後から不当に高い料金だと受け取られにくい

違反したとき

よくある書き方「損害賠償を請求する」
整えた書き方「利用の停止と削除を求める。ライセンスを受けた場合の料金に相当する額を目安として協議する」

理由実損の立証が難しい場面で、目安を示すと協議が進む。過大な金額を予定する書き方は、別の問題を生む

確認の問いと理由商業利用の定義を決める前の、確認の問い

  1. お客様の個人のSNSアカウントが、広告収入を受けていた場合はどう扱うか。

    収益化されたアカウントでの「記念投稿」を一律に禁止すると、日常の利用と衝突する。収益に直結する投稿かどうかで線を引くか、事前申出を条件にするかを決める。

  2. ブランドや店舗に写真を無償で渡して宣伝してもらうことを、どこまで認めるか。

    無償でも宣伝に使われる点では事業利用と変わらない。手配先の掲載として別に同意を取る型と、お客様の申出を条件にする型がある。

  3. ライセンスを受けた場合、写真の再加工や第三者への再提供は含まれるか。

    ライセンスの範囲に再許諾が入っていないと、広告会社や制作会社に渡した時点で範囲外になる。誰に何を渡すかを具体的に確認する。

  4. 撮影者の氏名(クレジット)の表示を条件にするか。

    氏名表示は著作者の権利でもある(19条1項)。表示を求めるのか、省略を許すのかを、利用の範囲と合わせて決める。

「商業利用」の言い方が複数の書類に出てくる場合は、定義が一つに揃っているかを見直します。

加工、AIによる変換、再配布をどう扱うか

納品後のお客様の利用で、増えているのが加工です。肌の補正や色味の調整、フィルター、スタンプや文字の追加、背景の入れ替え、画像生成AIによる変換などがあります。著作権法上は、これらは複製にとどまらない、翻案(27条)に近づく行為になり得ます。さらに、著作者には同一性保持権があり、その意に反して変更、切除その他の改変を受けないとされています(20条1項)。撮影者の側から見れば、お客様による大幅な加工は、同一性保持権の問題になり得ます。

この問題への一般的な対応は、軽微な加工は許諾の範囲に含め、撮影者の著作者人格権は行使しない、と契約に書くことです。軽微な加工の例としては、トリミング、明るさ・色調の調整、サイズの変更、文字やスタンプの追加などがあります。他方、顔や体型を大きく変形する加工、他の画像との合成、AIによる再生成などを許すかどうかは、サービスの方針によります。許さない場合は、「撮影者の意に反する改変」を禁じる書き方にします。AIへの入力については、データを外部の生成AIに読み込ませて学習に使わせることを許すかどうかを、別に明記しておくと、後の争いを避けられます。

再配布も、境界が曖昧になりやすい点です。お客様が友人にデータを送ることは、許されるとして、友人がそれを自分のSNSに投稿することはどうでしょうか。契約の許諾は、お客様個人に与えられたものです。友人は契約の当事者ではなく、友人の投稿は、お客様の許諾の範囲には含まれません。著作権法63条3項は、利用権は著作権者の承諾を得ない限り譲渡できないと定めています。実務では、「共有は許すが、友人による投稿や再配布は許さない」とするか、「友人がお客様の投稿を共有する(リポスト)ことは許す」とするかを、書いておきます。

書き方の例(一般的な例) 範囲の書き方

利用の主体

よくある書き方「個人利用の範囲で自由に使える」
整えた書き方「お客様ご自身、ご家族、親族及び友人との共有に限る。第三者による再配布、再投稿は含まない」

理由誰が使えるのかが分からないと、友人の投稿やグループ内のシェアで争いになる

加工

よくある書き方「加工は自由」または「加工禁止」
整えた書き方「軽微な加工(トリミング、色調の調整、文字の追加など)は含む。顔・体型の変形、他の画像との合成は含まない」

理由禁止も全面許可も実態に合わない。軽微と重大の線を、例で示す

生成AI

よくある書き方記載なし
整えた書き方「データを生成AIの学習用に入力し、又は提供することは含まない」など、方針を明記する

理由記載がないと、許されているのか、禁止なのかが判断できない

転載の方法

よくある書き方「SNSへの投稿は自由」
整えた書き方「個人のSNSへの投稿は、撮影者のクレジットを付けて行う。付けられない場合は、付けなくてもよい」など、運用に合わせる

理由クレジット表示を義務にすると、現実の運用と衝突する。努力義務にするか、必須にするかを決める

著作権を譲渡する場合の別条件:27条・28条の特掲と著作者人格権

お客様が「著作権そのものがほしい」と求める場面があります。たとえば、事業での利用を自由にしたい、画像を自分で加工して販売したい、といった希望です。著作権は、全部または一部を譲渡できます(著作権法61条1項)。譲渡する場合は、次の点に注意します。

  • 翻案権等の特掲:著作権を譲渡する契約において、27条(翻訳権、翻案権等)と28条(二次的著作物の利用に関する原著作者の権利)が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は譲渡した者に留保されたものと推定されます(61条2項)。お客様が写真を加工して使うことを想定するなら、27条・28条の権利を明記して譲渡します。
  • 著作者人格権の不行使:著作者人格権は著作者の一身に専属し、譲渡できません(59条)。そのため、譲渡後も撮影者が著作者人格権を行使できる状態が残ります。譲渡した撮影者または撮影会社が、お客様の利用に対して著作者人格権を行使しない、という約束を契約に書いておきます。
  • 撮影者の実績掲載:権利を譲渡すると、撮影者や撮影会社は、自社の写真を実績として使う権利も失います。そこで、譲渡後も、実績紹介のために、非独占的に利用することを許諾してもらう、という逆向きの許諾を書いておきます。お客様がこれを断る場合は、実績掲載ができないことになります。
  • 料金:譲渡は、実績掲載やデータの二次利用の可能性が失われるため、通常は、利用許諾より高い料金になります。譲渡価格の考え方を、あらかじめ示しておきます。
  • 撮影者との契約との整合:撮影会社が撮影者から利用の許諾しか受けていない場合、お客様に著作権を譲渡することはできません。撮影者との契約で、譲渡の権限があるかを先に確認します。

条文例著作権を譲渡する場合の条項(書き方の例・一般的な例)

  1. 当社は、お客様に対し、本件写真に関する著作権(著作権法第27条及び第28条に規定する権利を含む。)を、第○条に定める対価の支払を受けた時に譲渡する。
  2. 当社は、本件写真を撮影した者との契約により、その者がお客様及びお客様から正当に利用を認められた者に対して本件写真について著作者人格権を行使しない旨の約定を得ている(当社が著作者である場合は、当社はこれを行使しない。)。
  3. お客様は、当社に対し、当社が自己の実績の紹介のために、本件写真を非独占的に利用することを許諾する。ただし、お客様が事前に書面又は電磁的方法により掲載を希望しない旨を通知した写真を除く。

第3項は、お客様の承諾を前提にした実績掲載の許諾です。掲載の同意の取り方は実績掲載の同意で扱います。

侵害されたとき:停止の請求と、損害の考え方

許諾の範囲を超える利用や、無断転載が見つかったときの条文を整理します。著作者や著作権者は、著作権を侵害する者または侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止または予防を請求できます(著作権法112条1項)。あわせて、侵害の行為を組成した物などの廃棄その他の必要な措置を請求できます(同条2項)。また、故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害した者は、損害を賠償する責任を負います(民法709条)。著作権法には、損害の額の推定に関する規定もあります(114条)。

ただし、ここに挙げたのは条文の存在であって、侵害の成否や損害の額は、事情によって異なります。実務では、いきなり請求に進むのではなく、次の順に進めるのが一般的です。

利用の範囲を超える利用が見つかったときの、一般的な進め方

  1. 見つけた時点利用の場面と内容を記録する(画面の保存、掲載日、掲載の主体)先に削除すると証拠が失われる。記録と対応を分ける
  2. 契約の確認許諾の範囲に含まれるかを、契約書面と規約で確認する範囲に含まれていれば、侵害ではなく契約の問題になる
  3. 連絡利用者に事実を確認し、範囲を超えていれば、削除や停止を求める感情的な表現を避け、条文と契約の根拠を示す
  4. 結果の確認削除の完了を確認し、記録に残す削除後も、転載されたものがないかを確認する
  5. 再発の防止契約書の許諾の範囲の書き方に、不明確な点がなかったかを見直す同じ質問が繰り返し来るなら、規約や案内の書き方に原因があることが多い

個々の事案で、請求の可否や金額は異なります。条文と契約の内容から、順に確認します。

起きがちなこと

権利と利用範囲で起きがちなこと

  • 「個人利用は自由」とだけ書いたため、フォトブックの注文、披露宴での上映、友人の再投稿が許されるのか分からず、問い合わせが相次ぐ。
  • 個人のSNS投稿を許諾する条項がなく、お客様が善意で投稿したところ、規約違反だと指摘される。
  • 「商業利用」の定義が一文だけで、収益化されたアカウントの記念投稿や、友人の店舗への提供が、規約違反か判断できない。
  • 著作権の帰属先が「撮影者または当社」と二者択一の書き方になっており、許諾の根拠となる権利者が決まらない。
  • 撮影者から利用の許諾しか受けていないのに、お客様には著作権を譲渡する、という書き方になっている。
  • 軽微な加工を許すと書いたが、AIによる変換や合成が含まれるか分からず、納品後に争いになる。
  • 著作権を譲渡したあと、撮影者や撮影会社が実績として使えなくなることに気づき、逆向きの許諾を求める。
  • 書類ごとに「個人利用」「私的利用」「非営利」の言い方が違い、どの書類が優先するのかが分からない。

よくあるご質問

結婚写真の著作権は、撮影した人のものですか。それともお客様のものですか。

写真は著作権法10条1項8号の「写真の著作物」で、著作者は原則として撮影した人です(同法2条1項2号)。被写体になったお客様や、希望を伝えただけのお客様は、通常は著作者になりません。撮影会社が職務著作の要件(同法15条1項)を満たす場合は会社が著作者になります。実際の帰属は、撮影者と会社の契約でも決まります。

お客様が個人のSNSに写真を載せることは、契約がなくても自由にできますか。

法律上は自由とはいえません。私的使用のための複製は「家庭内その他これに準ずる限られた範囲」に限られ(著作権法30条1項)、SNSへの投稿は公衆送信にあたります(同法23条1項)。契約書で個人のSNSへの投稿を許諾しておくのが、お客様にも撮影する側にも分かりやすく、争いを避けやすい方法です。

フォトブックや年賀状を、外部の業者に注文してもよいことにするには、どう書けばよいですか。

30条1項は、使用する者が複製することを想定しているので、業者への注文は契約で明示しておくのが安全です。「印刷業者への注文を含む」と書き、用途を個人の記念用に限定し、販売や配布は含めない、と合わせて書きます。

商業利用を禁止する条項を置く場合、どこに注意すればよいですか。

定義を一文で済ませず、目的・主体・対価の三つの軸で書き、含まれる例と含まれない例を添えます。「当社が商業利用と判断した場合」のように判断を一方的に委ねる書き方は避け、迷ったときの事前確認の手順を書いておきます。金額は書かなくても、料金の決め方は示しておきます。

お客様から「著作権を譲渡してほしい」と言われました。何を決めればよいですか。

著作権は譲渡できますが(著作権法61条1項)、27条・28条の権利は特掲しないと譲渡した側に留保されたと推定されます(同条2項)。著作者人格権は譲渡できないので(同法59条)、不行使の約束を書きます。撮影者の実績掲載を許諾してもらう条項と、撮影者との契約に譲渡の権限があるかの確認も必要です。

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