荒天で撮れなかったとき:判断者・中止の範囲・代替プラン・日程変更

記念日の撮影が荒天で流れたとき、揉めやすいのは天気そのものではなく、誰が中止を決めたのか、支払済みの料金はどう精算するのか、日程変更は何回できるのかという決め方です。判断者、中止の範囲、代替プラン、日程変更の四つを、撮影の前に書面でそろえておく方法を整理します。

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「悪天候の場合は中止できる」とだけ書き、荒天の基準も判断者も返金の扱いも決めていないと、当日の中止が事業者に都合のよい判断に見え、記念日の撮影が不信感の残る出来事になります。

このページの要点

  • 荒天の定義は、基準・判断の時点・対象の三つに分けて書く。判断者は現場責任者・運営者・運営会社のうち誰かを決め、判断が割れたときの優先順位も書く。
  • 全部中止なら支払済みの料金を返し(民法536条1項・542条1項1号・545条)、一部実施なら実施部分を特定して差し引く(民法634条。準委任なら648条3項)。「返金しない」とだけ書く条項は点検が必要。
  • 代替プランは、屋内への切り替え・別の場所・別日程を事業者が示し、お客様が受けるかどうかを選べる形にする。受けた場合の差額精算も事前に決める。
  • 日程変更は、申請の期限・回数・追加費用・繁忙期の扱いを示し、お客様の都合で取りやめる場合とは精算を分ける。変更手数料は消費者契約法9条1項1号・10条の点検を要する。

結論:荒天の扱いは「誰が決めるか」「どこまで中止か」「代わりに何をするか」「日程を何回動かせるか」を、撮影の前に書いておく

屋外やロケーションでの前撮り・フォトウェディングは、天候の影響を受けます。雨や風、気温、足元の状態、日没の時刻、現地の施設や移動手段の運営状況によって、予定どおりに撮れないことがあります。このとき揉めやすいのは、天気そのものではありません。「中止にする」と決めたのは誰か、その判断は撮影の何日前・何時間前にされたのか、すでに衣装やヘアメイクの手配が動いている費用はどうなるのか、別日に撮るなら追加費用はいくらか、という「決め方」と「精算の仕方」です。

記念日に向けて準備を進めてきた二人にとって、撮影が流れることは、金額以上の出来事です。だからこそ、中止の基準があいまいなまま「当日の判断で」としか書かれていないと、事業者への不信につながります。書面に書いておくべきことは、次の四つです。

このページの要点(先に結論)

  • 判断者:現場の責任者、移動手段や施設の運営者、運営会社のうち誰の判断を撮影の可否の基準にするかを定め、判断が割れたときの優先順位を書く。
  • 中止の範囲:全部中止か、一部だけ実施できたのかを分け、全部中止なら支払済みの料金を返す、一部実施なら実施した部分を差し引く、という精算の型を決める。
  • 代替プラン:屋内への切り替えや別の場所、別日程といった選択肢を事業者が示し、お客様が受けるかどうかを選べるようにする。受けたときの差額精算も書く。
  • 日程変更:申請の期限、変更できる回数、繁忙期の追加費用を示し、お客様の都合で取りやめる場合とは扱いを分ける。

このページでは、天候を理由とする中止・延期の整理に絞ります。予約金や残金の性質は前撮り・撮影の予約金と残金、お客様の都合で取りやめる場合の費目別の料金設計は撮影のキャンセル料を費目ごとに決めるのページで扱っています。教室やイベントなど、撮影以外の場面での一般的な中止基準は、習い事・教室・イベントの規約と契約ガイドで扱っています。

「荒天」を定義する:基準、時点、対象の三つを分けて書く

規約や契約書に「荒天の場合は撮影を中止できる」とだけ書く例は多く見られます。しかし、荒天とは何かが決まっていないと、中止の判断が恣意的に見えます。事業者が早めに中止を決めたいときには、お客様は「まだ撮れたのではないか」と感じ、お客様が実施を望むときには、事業者は「安全が確保できない」と答えます。どちらの言い分も成り立つため、判断の基準を書面に出しておくことが、争いを防ぎやすくする有力な方法です。

基準の書き方には、三つの層があります。

荒天の定義を組み立てる三つの層

層内容書き方のポイント起きがちな不備
基準何をもって荒天とするか。降雨や強風、気温、足元の状態、日照、交通機関や施設の運行・営業状況など。数値の基準を置くか、公的な気象情報(警報・注意報など)や、施設・移動手段の運営者の判断に連動させるかを決める。数値の基準は「○を超える場合」と具体的に書く。「悪天候の場合」とだけ書き、何が悪天候かが読めない。複数の基準を並べて、どれか一つでも当てはまれば中止できるように読める。
時点いつの時点で判断するか。前日の判断、当日の出発前、現地での判断、撮影の途中。「前日の○時」「当日の集合の○時間前」など、判断の時点を並べる。時点ごとに、お客様への連絡方法と、返答の期限も書く。時点が書かれておらず、当日に現地へ集まってから中止が告げられる。連絡先に連絡がつかない場合の扱いがない。
対象撮影の全部が対象か、一部だけか。屋外の部分だけを止めるのか。屋外の撮影、屋内の撮影、移動、ヘアメイク、衣装の着付けなど、パッケージの構成要素ごとに、どれが止まるのかを分けて書く。全体の中止か、一部の中止かが書かれず、精算ができない。

数値の基準を置く場合も、現地の状況は刻々と変わります。基準を絶対のものとして書くより、「基準に当てはまる見込みがあるときは、運営会社が判断する」といった、判断者と基準を組み合わせた書き方が現実的です。

お客様の側から見ても、定義が書かれていることには意味があります。申込みの段階で、荒天時の扱いを読める形で示しておけば、「聞いていなかった」という不満を減らせます。民法548条の2第1項は、定型取引(不特定多数を相手に行う、内容が画一的な取引)で、条項のまとまり(定型約款)を契約の内容にする合意があったとき、または事前に表示していたときに、個別の条項にも合意したものとみなします。ただし同条2項は、相手方の権利を制限し、または義務を加重する条項のうち、取引の態様や実情、取引上の社会通念に照らして信義則(民法1条2項)に反して相手方の利益を一方的に害するものは、合意しなかったものとみなす、と定めています。荒天時の返金を一切認めない、日程変更を認めない、といった書き方は、この規定との関係で点検が必要になります。

判断者を並べる:現場責任者、移動手段や施設の運営者、運営会社

パッケージ型の撮影では、撮影の可否に関わる者が複数います。撮影現場を指揮する責任者、衣装やヘアメイクを担う提携先、移動手段や施設を運営する者、撮影を企画して契約の相手方となる運営会社、そして撮影者です。誰の判断が撮影の可否を左右するのかを書いておかないと、「施設は営業しているのに撮影会社が中止にした」「撮影会社は撮れると言ったのに移動手段が運休した」という食い違いが起きます。

判断の流れの例(一般的な組み立て)

運営会社撮影の可否の最終判断者(契約の相手方)利用規約・契約書
現場責任者現地の状況を見て、運営会社に判断材料を伝える社内の役割分担
移動手段・施設の運営者運行や営業の可否を決める。運営会社は、その判断に従う手配先との契約・施設の規程
お客様判断の結果と代替案を受け取り、受けるかどうかを選ぶ利用規約・個別条件表

運営者の判断が運営会社の判断を左右する場合は、書面に「運営者の判断に従う」と書いておきます。反対に、運営者が運行しているのに運営会社が安全上中止にする場合は、運営会社の判断で中止できると書いておくことで、判断が割れたときの優先順位が決まります。

判断者を決める条項には、ふつう次のような型があります。

判断者の置き方の型

運営会社の最終判断型

最終判断は運営会社が行う。

  • 運営会社が現場責任者・運営者の意見を聴いて決める。
  • 迅速に決められる反面、お客様からは「事業者に都合のよい判断」に見えやすい。
  • 判断の理由をお客様に説明する義務を併せて書くと、納得感が上がる。

運営者の判断連動型

移動手段や施設の運営者が運行・営業を止めたときは、自動的に中止とする。

  • 客観的な事実(運行の有無)に連動するので、争いになりにくい。
  • 運営者が動いていても撮影に適さない場合に対応できない。
  • 運営会社の判断で中止できる場合を、別に併記しておく。

合議・協議型

現場責任者とお客様が協議して決める。

  • 二人の希望に寄り添える反面、判断が先延ばしになりやすい。
  • 協議がまとまらないときの決め方を書いておく。
  • 安全に関わる場合は事業者の判断を優先する旨を併記する。

複数の型を組み合わせるのが一般的です。たとえば、運営者が運行・営業を止めたときは自動的に中止とし、それ以外の場合は運営会社が、現場責任者の意見とお客様の意向を聴いて決める、という書き方です。

判断が割れたときの優先順位は、安全の確保を最優先に置くと整理しやすくなります。安全に関する判断は運営会社または現場責任者が行い、お客様はこれに従う、お客様が従わずに実施を求めた場合は、事業者は撮影を実施しない・撮影を打ち切ることができる、と書いておきます。この場合の精算は「お客様の都合」ではなく、事業者の判断による中止として扱うのが公平なのかどうか、慎重に検討します。民法543条は、債務の不履行が債権者(ここではお客様)の責めに帰すべき事由によるときは、債権者は同法541条・542条による契約の解除ができないと定めています。お客様が安全上の指示に従わなかったために撮影が成り立たなかった、と評価できる場合と、天候が原因で誰の責任でもない場合とでは、精算の考え方が変わり得るため、書面には両者を分けて書いておきます。

全部中止・一部実施・代替プランの精算:返金の型を決める

天候で撮影が止まったとき、法律上の出発点は、民法536条です。同条1項は、当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったとき、債権者は反対給付の履行を拒むことができる、と定めています。荒天で撮影ができなくなり、事業者にもお客様にも責任がない場合、お客様は撮影料金の支払いを拒める、ということです。同条2項は反対に、債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行できなくなったときは、債権者は反対給付の履行を拒めない、と定めます。

すでに料金を支払っている場合は、事情が少し違います。契約を解除したうえで、支払済みの金銭を返してもらうという形になります。荒天で撮れなかったことが、直ちに債務の全部の履行不能に当たるとは限りません。日を改めて撮影できるのであれば、不能ではなく延期の問題として扱われることもあり、不能に当たるかは、契約の内容(その日でなければ目的を達しないか)と、日を改められるかによります。そのうえで、債務の全部の履行が不能であるときは、民法542条1項1号により、催告なしにただちに契約を解除できます。解除したときは、民法545条1項により、各当事者は相手方を原状に復させる義務を負い、同条2項により、金銭を返還するときは受領の時から利息を付さなければなりません。契約書に返金の方法や時期、手数料の扱いを書いておくのは、こうした法律上の道筋を、実務に合う形で整えるためです。

撮影の一部だけが実施できた場合は、さらに考えることがあります。撮影を請け負う契約を請負と見たときは、民法634条が、注文者の責めに帰することができない事由によって仕事を完成することができなくなったとき、または請負が仕事の完成前に解除されたときは、請負人がすでにした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは、その部分を仕事の完成とみなし、注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求できる、と定めます。撮影を準委任と見るときは、民法648条3項が、委任者の責めに帰することができない事由で委任事務の履行ができなくなったとき、または委任が履行の中途で終了したときは、受任者はすでにした履行の割合に応じて報酬を請求できると定めます(準委任は同法656条)。実際の書面では「実施できた部分に相当する料金を差し引いて返金する」とだけ書かれがちですが、何を実施部分とするのかが読めないと、精算の場面で争いになります。

中止の範囲ごとの精算の型(一般的な考え方)

場面精算の考え方書面に書くこと注意する点
撮影の全部が実施できなかった支払済みの撮影料金を返す。事業者が手配先にすでに支払った実費を差し引く定めは、民法536条1項(お客様は反対給付を拒める)と異なる特約となるため、費目と根拠を説明できる範囲にとどめる。返金の対象と時期、振込手数料の負担、返金の期限。実費の控除や、「返金しない」と一律に書く特約は、消費者契約法10条の観点から点検が必要になる。
一部だけ実施できた実施できた部分を特定し、その部分に相当する料金を差し引いて、残りを返す。実施部分の区分(例:ヘアメイクと屋内撮影は実施、屋外撮影は未実施)と、それぞれの料金の内訳。個別条件表に、項目ごとの料金の内訳がないと、差引きの根拠を示せない。
代替プランを受けた代替プランの料金とのあいだの差額を精算する。代替プランの内容と料金、差額の精算の方法を、事前に書面(メッセージを含む)で確認する。口頭で「屋内で撮る」と決めて、後から料金の食い違いが出る。
お客様の事情で出発しなかった開催可能と判断された場合は、キャンセルの扱い。判断の時点と、お客様の連絡の期限。次の節で述べる。

「事業者がすでに負担した費用」を差し引く場合は、費目ごとの根拠を説明できるようにしておきます。

条文例荒天による中止の条文例(書き方の例)

  1. 撮影の実施の可否は、前日の○時または当日の出発前に、当社が、気象の状況、現地の安全、施設または移動手段の運営者の判断その他の事情を総合して決定します。当社は、決定したときは、速やかに、あらかじめ届けられた連絡先にその旨と理由を連絡します。
  2. 前項により撮影の全部を実施しないときは、当社は、お客様に対し、お支払い済みの料金から、別表に定める当社が負担した実費を除いた額を、○日以内に返金するか、お客様の選択により、第○条の日程変更を行います。
  3. 撮影の一部のみを実施したときは、実施した部分に相当する料金を別表に従って算定し、お支払い済みの料金からこれを差し引いた額を返金します。
  4. 当社が前項までの決定に至るまでに、お客様に代替の撮影内容(屋内への変更、撮影場所の変更、日程の変更)を提示したときは、お客様は、これを受けるかどうかを選択できます。お客様が受けたときは、差額を精算します。

空欄には、期限や時刻の具体的な数を入れます。別表には、手配先ごとの実費の考え方を書いておきます。

代替プランは、お客様に選択肢を示すものであって、押し付けるものではありません。「代替プランを拒否した場合は一切返金しない」と書くと、民法536条1項や消費者契約法10条との関係で点検が必要です。拒否した場合にどう精算するかを、全部中止と同じ扱いにするのか、実費を差し引くのかを決め、書面に書いておきます。

日程変更:申請期限、回数、追加費用、繁忙期を書く

天候で撮影を延期する場合、「いつまでに申し出れば」「何回まで」「追加費用はいくらか」が決まっていないと、次の撮影日にまた揉めます。記念日や挙式の日程に間に合わせたい場合は、変更できる期間に上限があります。衣装を借りられる期間、ヘアメイクや装花の担当者の予定、施設の予約の空きなど、手配先の都合が日程を縛るからです。

日程変更の時間軸の例(撮影日を基準に)

  1. 申込みの時荒天時の扱いと、日程変更のルールを示す。個別条件表に、変更の回数と、追加費用の有無を書く。
  2. 撮影の○日前天気の見通しに応じて、お客様に事前の確認を連絡する。連絡を受ける方法と、返答の期限を決めておく。
  3. 前日の○時運営会社が、翌日の実施の可否を判断し、連絡する。連絡がつかない場合の扱いを決めておく。
  4. 当日の出発前最終判断。移動手段や施設の運営者の判断にも連動する。判断の理由を、お客様に説明できるようにしておく。
  5. 撮影の中止の決定後お客様が、日程変更・返金・代替プランから選ぶ。選択の期限と、期限までに選ばなかった場合の扱いを書く。
  6. 変更後の撮影日変更後の撮影日が決まった後の荒天は、再び同じルールで扱う。変更の回数に上限を置くなら、何回目からは別の扱いかを書く。

時点の数字(日数や時刻)は、手配先の変更・キャンセルの期限に合わせて決めます。事業者側が手配先に支払う費用が増えるタイミングと、お客様に求める期限のタイミングをそろえておきます。

日程変更に手数料を設ける場合は、考え方を整理しておきます。変更が「契約の解除と新たな契約」に当たるのか、「同じ契約の内容の変更」にとどまるのかで、法律の見方が変わります。変更手数料が、実質的には解除に伴う違約金と評価されるなら、消費者契約法9条1項1号の平均的な損害の枠組みが問題になり得ます(考え方は費目別のキャンセル料のページで整理しています)。そうでなくても、消費者契約法10条は、消費者の権利を制限し義務を加重する条項で、民法1条2項の基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものを無効とするため、荒天という誰の責任でもない事情で変更が必要になった場合にまで手数料を求めるのが相当か、書き方を点検します。

書き方の例(一般的な例) 荒天による日程変更の条項

回数と費用

よくある書き方「日程変更は1回に限り無料」とだけ書く。
整えた書き方荒天による変更は、事業者の判断による中止の場合に限り、○回まで追加費用なしとし、○回を超える場合や、お客様の都合による変更の場合は、手配先の実費に限って追加費用を請求する、と区別して書く。

理由何の事由による変更なのか(荒天か、お客様の都合か)で扱いを分けると、不公平感が減るため。

繁忙期の扱い

よくある書き方「繁忙期は別途料金」とだけ書く。
整えた書き方繁忙期の期間を個別条件表に示し、追加費用の考え方(手配先の料金の差額の範囲)を書く。

理由期間と金額の根拠が読めると、「後から高くなる」という不信を避けられるため。

期限の過ぎた変更

よくある書き方「変更できる期間を過ぎたときは一切応じない」と書く。
整えた書き方期間を過ぎたときは日程変更に代えて、キャンセルの規定に従って精算する旨を書き、手配先の都合が許す範囲で変更に応じる余地も示す。

理由一切応じないと書くと、事業者側の事情で期限が過ぎた場合にまで及んでしまうため。

変更後の日程でも荒天になることがあります。そのときのために、変更の回数の上限と、上限を超えたあとの扱い(返金か、再度の変更か)を、最初の契約の時点で書いておきます。「何度でも無料」と書くのは、事業者の負担が読みにくくなり、「1回限り」と書くのは、お客様の不安を残すため、どちらも一律に決めにくいところです。段階を設ける書き方が、現実的です。

お客様の都合で出発しなかった場合との区別

荒天時の精算は、お客様の都合で撮影を取りやめる場合と区別します。事業者が「撮影は実施可能」と判断したのに、お客様が「天気が悪いので行かない」と判断した場合は、事業者の責めに帰すべき事由ではなく、また天候による不能でもないので、キャンセルの規定の問題になります。この区別を書面に出しておくことが、トラブルを避けるために重要です。

区別のために、判断の時点と判断者を明記します。「実施の可否は運営会社が決定し、実施可能と決定したときに、お客様の都合で参加しなかったときは、第○条のキャンセルの規定に従う」と書き、キャンセル料の時期の区分や、日数の数え方は撮影のキャンセル料を費目ごとに決めるのページで述べる設計に合わせます。

お客様の側の「不安」を、事業者が受け止める運用も欠かせません。たとえば、判断の時点より前に、お客様から「悪天候が心配なので延期したい」と申し出があったとき、事業者がこれを受けて日程変更に応じるかどうかです。受けるなら、通常のキャンセルとは別の「事前の延期」の扱いとして、変更の回数にも数えるのか数えないのかを書きます。受けないなら、お客様に早めの判断を促す案内を用意します。いずれにしても、書面の文言と案内の運用を、一致させておきます。

確認の問いと理由荒天の条項を見直すときの確認の問い

  1. 荒天の基準は、数値か、公的な情報か、運営者の判断かを、書面から読めるか。

    基準が読めないと、中止の判断が恣意的に見えるため。

  2. 判断者は誰か。判断が割れたときの優先順位は書いてあるか。

    現場、運営者、運営会社の判断が食い違う場面が実際に起きやすいため。

  3. 全部中止・一部実施・代替プランを受けた場合の精算を、別々に書いてあるか。

    精算の型が一つだと、実際の場面に合わず、争いになりやすいため。

  4. 手配先の実費を差し引く場合、費目ごとに根拠を説明できるか。

    消費者から説明を求められたときに、算定の根拠の概要を説明するよう努めなければならないとされているため(消費者契約法9条2項)。

  5. 日程変更の期限、回数、追加費用は、個別条件表に書いてあるか。

    規約の本文に書くより、プランごとに違う内容は個別条件表に出す方が読み違えが少ないため。

  6. お客様が実施をやめた場合の扱いと、事業者が中止した場合の扱いを、書き分けているか。

    同じ「中止」でも、精算が逆になることがあるため。

問いを書面の見直しの順に並べました。上から順に、当てはまらないものがないかを確認します。

起きがちなこと:場面別に

荒天・日程変更で起きがちなこと

  • 前日夜の連絡に気づかない:連絡手段が一つしかなく、お客様が見落とす。連絡が届いたとみなす時点(民法97条1項は、意思表示は通知が相手方に到達した時からその効力を生ずると定めます)と、再連絡の手順を決めておく。
  • 現地で判断が変わる:集合してから運営者の判断で運行が止まる。往復の費用や、すでに着替えた分の精算を、代替プランの提示とセットで決めておく。
  • 屋内に切り替えたら、写真の雰囲気が違う:屋内でも同じ納品枚数で足りるのか、衣装の合わせ方が変わるのかを、代替プランの提示のときに説明しておく。受けるかどうかの選択を、お客様が自分で決められるようにする。
  • 記念日の日程に間に合わない:変更後の撮影日が、挙式や記念日、衣装の返却日より後になる。日程変更の際に、変更できる最終日を示し、間に合わないときの扱いも書いておく。
  • 「返金しない」とだけ書いていた:荒天で全部中止になったときの返金が書かれておらず、お客様が「規約にないから返してもらえない」と受け取る。全部中止の返金は、書面に明記する。
  • 手配先の実費を差し引くと言ったが、根拠を示せない:手配先の規約と、お客様に示した費目が一致しない。費目と金額の根拠を、手配先との取り決めに合わせて整理する。
  • 安全上の指示に従わなかった:お客様が撮影の継続を強く望み、事業者が安全上の理由で止めた。止めた理由と判断者を記録に残し、当日のやり取りは撮影当日の中止とトラブルのページの整理に沿って確認する。

天候は、事業者にもお客様にも動かせません。だからこそ、「天気のせい」と言われたときに、どちらにも納得できる説明が用意されている必要があります。判断者・精算・代替・日程変更の四つを、あらかじめ書面にそろえておくことで、当日の雰囲気を壊さずに、撮影の延期や中止を進められます。パッケージに含まれる衣装・ヘアメイクなどの手配先との関係は衣装・ヘアメイク・装花の提携先との責任分担のページで続けて確認してください。

よくあるご質問

荒天で撮影が全部できなかったとき、支払済みの料金は返すものですか。

荒天で撮れなかったことが直ちに全部の履行不能に当たるとは限らず、日を改めて撮影できる場合は延期の問題になります。当事者双方の責めに帰することができない事由で撮影が全部できなくなった場合は、民法536条1項により、お客様は反対給付(撮影料金の支払い)を拒むことができ、支払済みの料金は、契約の解除(民法542条1項1号)による原状回復(545条)の形で返すのが基本の考え方です。事業者がすでに負担した実費を差し引く定めは、民法536条1項と異なる特約になるため、費目と根拠を説明できる範囲にとどめ、消費者契約法10条の観点からも点検が必要です。「返金しない」とだけ書く条項も同様です。

荒天かどうかを決める人は、現場責任者でも運営会社でもよいのですか。

どちらでも構いませんが、書面に書いておく必要があります。現場責任者、移動手段や施設の運営者、運営会社のうち誰の判断を基準にするかと、判断が割れたときの優先順位を決めます。運営者が運行・営業を止めたときは自動的に中止とし、それ以外は運営会社が決定するという組み合わせが、実務では多く見られます。判断の理由をお客様に説明する取り決めも添えると、納得感が上がります。

代替プランを提示されて、受けなかったらどうなりますか。

代替プランは、お客様が受けるかどうかを選べる形にしておくのが基本です。受けなかった場合の精算は、書面によります。全部中止と同じ扱いにして、支払済みの料金を返す(事業者の実費を差し引く場合は根拠を示す)書き方と、日程変更に進む書き方があります。受けない場合は一切返金しない、とだけ書くのは、民法536条1項や消費者契約法10条の観点から点検が必要です。

お客様のほうから「天気が悪いので延期したい」と言った場合も、荒天の扱いになりますか。

事業者が撮影は実施可能と判断したのに、お客様が取りやめる場合は、荒天による中止ではなく、お客様の都合によるキャンセルの扱いになります。ただし、判断の時点より前に、お客様から事前の延期の申出があったときの扱いを、書面に書いておくと誤解が減ります。たとえば、事前の延期に応じる期間を設け、その期間内なら日程変更として扱う、という書き方です。

日程変更に手数料を取ってもよいですか。

手数料を取ること自体を禁じる規定はありませんが、実質が契約の解除に伴う違約金に当たるなら、消費者契約法9条1項1号の平均的な損害の額を超える部分が無効になります。荒天のように誰の責任でもない事情で変更が必要になった場合に、手数料を求めるのが相当かは、同法10条の観点からも点検が必要です。荒天による変更は一定の回数まで追加費用なしとし、お客様の都合による変更に限って実費を求める、という区別が一つの考え方です。

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