このページの要点
- 著作権の置き場所は、撮影者に残す型と撮影会社に集める型。どちらでも、お客様に許諾できる権限を契約で確かめる(著作権法61条・63条)。
- 撮影者に残す型は再許諾の権限を明記し、契約終了後もお客様の利用が続く旨を書く。集める型は27条・28条を特掲する(61条2項、63条3項)。
- 著作者人格権は譲渡できないので(59条)、放棄ではなく不行使とし、相手方にお客様や手配先も含める。再委託、データの消去、素材サイト・生成AI学習への登録禁止も定める(個人情報保護法25条)。
- 個人の撮影者には、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス法。3条・4条・5条)または中小受託取引適正化法(取適法。3条・4条・5条)の確認が必要。解除と報酬は双方に偏らない書き方にする。
結論:撮影者との契約は、お客様に使わせる権利まで届く「連鎖」として設計する
撮影会社が、自社のフォトグラファーだけでなく、外部の撮影者にも撮影を任せる場面は少なくありません。繁忙期の増員、遠方のロケーション、特定の撮影スタイルの専門家への依頼などです。このとき、撮影会社と撮影者の間の契約は、二人の間の報酬と業務の取り決めにとどまりません。撮影された写真は、最終的にお客様のもとに納品され、お客様が個人のSNSやフォトブックで使います。その使用が許されるのは、撮影者から撮影会社へ、撮影会社からお客様へ、権利の許諾が途切れずにつながっているからです。
この「つながり」を、このページでは許諾の連鎖と呼びます。連鎖のどこかが欠けると、お客様に許諾したはずの利用が、実は撮影者の許諾の範囲外だった、という事態になります。撮影者の側から見れば、撮影会社に渡した権利が、自分の知らない範囲でお客様や手配先にまで広がっていた、という不安にもなります。
この図の中心にあるのは、四つの決めごとです。
撮影者から、お客様の手元までの許諾の連鎖
図の左から右へ、権利の範囲が狭まっていく関係にあります。撮影者から撮影会社への許諾の範囲が、撮影会社からお客様への許諾の範囲を含んでいる必要があります。
このページは、一般的な条文と書き方の整理です。個別の契約への当てはめは、撮影者との関係や、サービスの仕組みによって異なります。お客様が使える範囲の書き方は結婚写真の著作権と使える範囲で、撮影前に集める個人情報の整理は撮影サービスの個人情報で、手配先との責任分担は衣装・ヘアメイク・装花の提携先との責任分担で扱います。
先に結論を並べます。
- 著作権の置き場所は、撮影者に残す型と、撮影会社に集める型の二つ。どちらでも、お客様に許諾できる権限が撮影会社にあることを、契約で確かめる。
- 撮影者に残す型では、お客様への再許諾の権限を、明記する。利用権は、著作権者の承諾を得ない限り譲渡できない(著作権法63条3項)。
- 撮影会社に集める型では、翻案権等(27条・28条)を特掲する。特掲がないと、撮影者に留保されたと推定される(61条2項)。
- 著作者人格権は譲渡できないので、不行使の約束にする。放棄ではなく不行使とするのが一般的で、相手方に、お客様や手配先も含める(59条)。
- 再委託、データ管理、AI学習や素材サイトへの登録を、契約で決める。個人情報を含む写真データを預かるので、委託先の監督の問題でもある(個人情報保護法25条)。
- 個人の撮影者に委託するときは、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス法)または中小受託取引適正化法(取適法)の適用を確認する。どちらが当たるかで、書面の明示と支払期日の扱いが変わる。
撮影者との契約を考える前に、手元に置くもの
- お客様との利用規約・契約書のうち、写真の権利と利用範囲に触れている部分
- 撮影者に任せる業務の範囲(撮影のみか、レタッチ、データの整理、納品まで含むか)
- 撮影者が自分の実績やポートフォリオとして写真を使いたい範囲
- 撮影者が個人か、従業員を使う法人か、また撮影会社の規模(資本金・従業員数)
著作権の置き場所:撮影者に残す型と、撮影会社に集める型
撮影者に任せるとき、最初に決めるのは、写真の著作権をどちらに置くかです。大きく二つの型があります。
著作権の置き場所の二つの型
撮影者に残す型
著作権は撮影者が持ち、撮影会社には利用を許諾する
- 撮影会社は、お客様への許諾に必要な範囲で、再許諾できる権利を受ける
- 撮影者は、自分の実績やポートフォリオに写真を使いやすい
- 撮影者が複数いる場合、撮影者ごとに許諾の範囲を確認する必要がある
撮影会社に集める型
著作権を撮影者から撮影会社に譲渡する
- 撮影会社が、お客様への許諾や権利の管理を、自社の判断でできる
- 翻案権等(27条・28条)を特掲し、著作者人格権は不行使の約束で補う
- 撮影者の実績掲載を、逆向きの許諾として決めないと、撮影者が自分の写真を使えなくなる
契約の目的、撮影者との関係、報酬の水準によって選びます。どちらを選んでも、「お客様に許諾できる権限が撮影会社にある」ことを、契約書の中で確認できるようにします。
二つの型の比較
| 観点 | 撮影者に残す型 | 撮影会社に集める型 |
|---|---|---|
| 権利の持ち主 | 撮影者 | 撮影会社(譲渡の時点から) |
| お客様への許諾 | 再許諾の権限を撮影者から受けて、撮影会社が許諾する | 撮影会社が、自らの権利として許諾する |
| 撮影会社の安心 | 契約が終了すると、許諾の根拠が失われる可能性があり、存続の定めが必要 | 譲渡により、契約終了後も権利が残る |
| 撮影者の実績掲載 | 自分の権利なので、使いやすい(範囲は契約で調整) | 譲渡後は、撮影会社から許諾を受けないと、使えない |
| 撮影者の報酬 | 権利を残すぶん、報酬が抑えられることがある | 権利を手放すぶん、報酬に反映されることがある |
| 書き方の要点 | 再許諾可能な利用許諾、範囲、期間、独占か非独占か | 27条・28条の特掲、不行使、実績掲載の許諾 |
「著作権は撮影者または撮影会社に帰属する」のように、二者択一の形で書いてしまうと、権利者が決まらず、許諾の根拠も不明確になります。写真ごと、プランごとに型が違う場合は、「次のものは撮影者に帰属し、次のものは撮影会社に帰属する」と、区分の基準を書きます。
許諾の連鎖:撮影者から撮影会社、撮影会社からお客様へ
撮影者に権利を残す型で、連鎖を成り立たせるには、次の三つが必要です。
- 撮影者が撮影会社に、写真の利用を許諾する(利用の範囲、期間、地域、独占か非独占か)
- その許諾に、お客様への再許諾の権限が含まれている
- 撮影会社がお客様に許諾する範囲が、撮影者から受けた範囲を超えない
著作権者は、他人に対し、その著作物の利用を許諾できます(著作権法63条1項)。許諾を得た者は、その許諾に係る利用方法及び条件の範囲内で著作物を利用できます(同条2項)。一方、利用権は、著作権者の承諾を得ない限り、譲渡できません(同条3項)。再許諾は、利用権の譲渡そのものではありませんが、契約で認められていなければ当然にはできないと考えるのが、安全です。撮影者との契約に、「撮影会社は、お客様に対し、個人の記念としての利用を許諾することができる」と、再許諾の権限を明記します。
条文例撮影者から撮影会社への利用許諾と再許諾(書き方の例・一般的な例)
- 本件写真の著作権は、撮影者に帰属する。
- 撮影者は、当社に対し、本件写真を、次の目的で、非独占的に利用することを許諾する。
(1) お客様への納品
(2) お客様に対する、個人の記念としての利用の許諾
(3) 当社の実績の紹介(撮影者の事前の承諾を得た写真に限る) - 当社は、前項(2)の目的のために必要な範囲で、お客様に対し、本件写真の利用を許諾することができる。当社は、撮影者に対し、お客様に許諾する範囲が、前項の範囲を超えないことを表明し、保証する。
- 本契約が終了した場合であっても、当社がお客様に対して既に許諾した利用は、その許諾の条件の範囲で、引き続き有効とする。
第4項は、契約の終了後のお客様の利用を守るための条項です。書かないと、撮影者との契約が終了した時点で、お客様の利用の根拠が揺らぐ場合があります。
第4項について補足します。利用権は、利用権に係る著作物の著作権を取得した者その他の第三者に対抗できます(著作権法63条の2)。撮影者が第三者に著作権を譲渡しても、撮影会社の利用権は新しい著作権者に対抗できる、ということです。ただし、これは著作権者が変わる場面の規定です。撮影者と撮影会社の契約が終了した場合に、撮影会社がお客様に再許諾した利用がどうなるかは、契約に書かなければ決まりません。お客様への納品後に、撮影者との関係が悪化して契約を解除した場合でも、お客様が使い続けられるよう、存続を契約で定めておきます。
確認の問いと理由許諾の連鎖を確かめる、確認の問い
撮影者から受けている許諾は、お客様への再許諾を含んでいるか。
含んでいないと、お客様への許諾は、撮影会社が自分の権限を超えて行ったことになる。撮影者との契約に、再許諾の権限を明記する。
お客様に許諾する範囲(SNS、フォトブック、上映)は、撮影者から受けた範囲に収まっているか。
上流の許諾が狭く、下流の許諾が広いと、連鎖が途切れる。お客様向けの規約を変更したら、撮影者との契約との整合も見直す。
撮影者との契約が終了した後も、お客様の利用は続くか。
存続を定めておかないと、撮影者の同意が得られなくなったときに、お客様が使えるかが争いになる。
撮影会社が実績として使う範囲は、撮影者の許諾に含まれているか。
実績掲載は、お客様への許諾とは別の利用。撮影者の承諾が必要な範囲を、契約で決める。
手配先への提供(手配先による掲載)は、撮影者の許諾に含まれているか。
手配先は撮影会社とは別の事業者。手配先への再許諾が含まれていないと、範囲外になる。実績掲載の同意の取り方は別のページで扱う。
著作者人格権の扱い:譲渡できないので、不行使の約束にする
著作権を譲渡する型でも、許諾の型でも、著作者人格権の扱いは別に決めます。著作者人格権は、著作者の一身に専属し、譲渡できません(著作権法59条)。つまり、撮影者から撮影会社に著作権を譲渡しても、著作者人格権は撮影者に残ります。撮影者が、公表権(18条1項)、氏名表示権(19条1項)、同一性保持権(20条1項)を行使すると、撮影会社やお客様の利用が妨げられる可能性があります。
具体的には、次のような場面が問題になります。
- 同一性保持権:撮影会社が、補正やトリミング、色味の調整を行うこと。お客様が軽微な加工を行うこと。手配先が、掲載のためにサイズを変更すること。
- 氏名表示権:納品する写真や、SNSの投稿に、撮影者の氏名を表示するか、表示を省略するか。
- 公表権:まだ公表されていない写真を、撮影会社の実績として公表すること。
これらへの一般的な対応は、「著作者人格権を行使しない」と契約に書くことです。放棄という書き方もありますが、著作者人格権は譲渡できない権利であり、放棄の有効性には疑問があるため、不行使の約束とするのが一般的です。不行使の相手は、撮影会社だけではなく、「撮影会社から利用を認められた者」(お客様、手配先、印刷業者など)にまで広げます。
書き方の例(一般的な例) 著作者人格権の書き方
相手方
理由当社だけに不行使を約束しても、お客様や手配先が撮影者から請求を受ける可能性が残る
放棄か不行使か
理由人格権は譲渡できない性質のため、全面的な放棄の有効性に疑問がある。不行使の約束が一般的
範囲
理由範囲を限定すると、撮影者の納得を得やすい。除外を明記すると、紛争の余地が小さくなる
氏名表示
理由氏名表示の運用を決めておくと、SNSの投稿や広告で揉めにくい
再委託・データ管理・AI学習と素材サイト:預かるデータの扱い
撮影者は、撮影の後も、一定の期間、写真のデータを手元に保管しています。納品、レタッチ、バックアップのためです。この手元のデータは、お客様の顔や、同行者、会場が写る個人情報を含みます。撮影会社は、撮影者に個人データの取扱いを委託したものとして、委託先の安全管理が図られるよう、必要かつ適切な監督を行います(個人情報保護法25条)。契約には、少なくとも次の項目を入れます。
データの扱いに関する、契約の項目
- 撮影データの使用目的を、本件業務に限ること(撮影者自身の事業のための転用の禁止)
- 保管の方法(端末の管理、クラウドの利用の可否、共有リンクの扱い)と、保管の期間
- 業務が終わった後の、データの消去または返却の期限と、消去したことの確認
- 再委託(アシスタント、レタッチの外注)の可否。可とする場合は、事前の承諾と、再委託先に同じ義務を負わせること
- 漏えい、紛失、不正アクセスが疑われる場合の、撮影会社への連絡の期限と方法
- 素材販売サイトやストックフォトへの登録の禁止
- 生成AIの学習用として、データを入力し、または提供することの禁止
- 撮影者が自分のSNSやポートフォリオに載せるときの、事前の承諾の取り方
素材販売サイトへの登録や、生成AIの学習用への利用は、近年、条項に明記されることが増えています。お客様の顔が写る写真は、お客様の同意がない限り、撮影会社の側からも、そのような利用はできません。撮影者がこれらに使うと、撮影会社が、お客様に説明できない状態になります。禁止は、撮影者自身の利用だけでなく、再委託先の利用も対象にします。
もう一つ、撮影者が、撮影会社の指示によらず、撮影時に独自の判断で行う撮影(予定にないカット)や、高所や特殊な機材を使う撮影を、契約でどう扱うかも、決めておきます。安全面や会場のルールに関わるため、撮影の前に撮影会社の承諾を得る、と書くのが一般的です。
写真の内容について、第三者の権利を侵害しないことを、撮影者に表明し保証してもらう条項もあります。撮影時に背景に写る美術作品や建築物、ロゴ、他の利用者などが問題になる場面があるためです。付随して写り込んだ著作物の利用には、条件付きで認められる規定があります(著作権法30条の2)。この規定の範囲を超える撮影の要求や、会場の個別ルールに反する撮影は、撮影者に任せきりにせず、事前に撮影会社が確認しておきます(会場・ロケ地・式場での撮影の確認事項)。
個人の撮影者に委託するとき:フリーランス法と取適法の確認
撮影を任せる相手が個人の撮影者や、一人で運営している法人である場合は、取引を適正にするための法律の確認が必要です。関係する法律は二つあります。
二つの法律の、基本的な違い(一般的な整理)
| 観点 | 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス法) | 中小受託取引適正化法(取適法) |
|---|---|---|
| 相手方 | 特定受託事業者:従業員を使用しない個人、または一人の代表者以外に役員がなく従業員を使用しない法人(2条1項) | 中小受託事業者:個人、または資本金・従業員数が一定以下の法人(2条9項) |
| 委託する側 | 業務委託事業者。支払期日や禁止事項の規定は、従業員を使用する個人、または二以上の役員がある、もしくは従業員を使用する法人(特定業務委託事業者)が対象(2条6項、4条、5条) | 委託事業者:資本金・従業員数が一定を超える事業者(2条8項) |
| 対象となる委託 | 業務委託:物品の製造や情報成果物の作成の委託、役務の提供の委託(2条3項) | 製造委託、修理委託、情報成果物作成委託、役務提供委託、特定運送委託(2条1項〜5項)。政令は、情報成果物作成委託・役務提供委託について、委託事業者と中小受託事業者の資本金の区分を分けるもので、対象となる委託を限定するものではない |
| 書面等での明示 | 直ちに、給付の内容、報酬の額、支払期日などを、書面または電磁的方法で明示する(3条) | 直ちに、給付の内容、代金の額、支払期日、支払方法などを、書面または電磁的方法で明示する(4条) |
| 支払期日 | 給付を受領した日(役務の提供の場合は提供を受けた日)から起算して60日以内で、できる限り短い期間内(4条1項) | 給付を受領した日(役務の提供の場合は提供を受けた日)から起算して60日の期間内で、できる限り短い期間内(3条1項) |
撮影を任せる契約が、どちらの法律に当たるかは、委託する側と受託する側の規模、委託の内容(写真データの作成を委託するのか、撮影という役務の提供を委託するのか)によって整理されます。撮影が、どの類型に当たるのか、取適法の対象になる情報成果物や役務の範囲に入るのか、また両方の要件を満たす取引で、どのように適用が整理されるのかは、条文と、所管官庁(公正取引委員会、中小企業庁)が公表している資料で、確認が必要です。
どちらに当たる場合でも、実務上の要点は共通しています。
- 書面等での明示:給付の内容(撮影の日時、場所、枚数、納品の形式)、報酬の額、支払期日を、契約書または発注書で明示する。
- 支払期日:撮影の日や、データの納品を受けた日から数えて、60日以内の日に支払日を定める。月単位の締切制度(毎月末日締め・翌月末日払いなど)は、公正取引委員会の運用上「受領から2か月以内」として扱われ、問題とされない(フリーランス法Q&A)。月末締め翌々月払いのように、これを超える設定は60日の枠を超える。
- 受領後のやり直しや報酬の減額:撮影者に責任がないのに、納品後の変更ややり直しを求めたり、報酬を減らしたりしない(フリーランス法5条、取適法5条)。フリーランス法5条の禁止行為は、1項・2項とも、政令で定める期間(1か月)以上の業務委託が対象である(施行令1条)。1か月未満の単発の委託でも、業務委託事業者の3条の明示と、従業員を使用する特定業務委託事業者の4条の支払期日の定めは適用される。適用の要件は、条文で確認する。
- 知的財産の取扱い:権利の譲渡や許諾の範囲を超えて、無償で権利を提供させる書き方にならないよう、対価の考え方を契約で説明できるようにする。
この確認は、契約書の形式を整えるだけでは完結しません。支払いの運用(締め日、振込日)や、撮影後のやり直しの依頼の扱いも、法律の趣旨に沿っているかを見直します。撮影者との関係が、雇用や労務に近い形(勤務時間の拘束、指揮命令など)になっていないかの検討は、このガイドの対象外です。
撮影を請ける側が、契約書を見るときの確認の問い
ここまでは、任せる側の視点を中心に書きましたが、請ける側の撮影者にとっても、契約書は自分の権利と収入に関わる書類です。署名の前に、次の点を見直します。
確認の問いと理由撮影者が契約書を受け取ったときの、確認の問い
著作権を譲渡する内容になっているか。許諾にとどまっているか。
譲渡であれば、報酬がその対価として見合っているか、自分の実績に使えるかが変わる。27条・28条の特掲があるかも見る。
自分の実績やポートフォリオに写真を使える範囲が書かれているか。
書かれていないと、撮った写真を自分の作品として見せられない場合がある。媒体と、撮影会社の事前承諾の要否を確認する。
著作者人格権の不行使は、誰に対するものか。範囲は限定されているか。
相手方がお客様や手配先まで広がっているか、自分の名誉・声望を害する改変が除かれているかを見る。
再許諾の範囲と、契約終了後の扱いはどうなっているか。
自分が許諾した写真が、どこまで再許諾され、契約が終わった後も使われるのかを把握する。
報酬の支払期日は、納品や受領から何日以内か。
支払期日が長すぎないか、天候で中止になったときの報酬や準備費用の扱いが書かれているかを見る。
損害賠償に上限があるか。データの紛失の責任はどこまでか。
上限のない賠償は、個人の撮影者には重い。故意・重過失を除いた上限が書かれているかを見る。
これらの確認は、契約をまとめるためのものであり、相手方を疑うためのものではありません。請ける側が内容を理解して署名した契約書のほうが、トラブルの際に、双方が同じ前提で話し合えます。
解除・報酬・責任の上限:片方に偏らない書き方
撮影者との契約で、最後に整えるのが、解除、報酬、責任の条項です。撮影会社の側で書いた契約書では、次のように、一方に偏った書き方が出やすくなります。
書き方の例(一般的な例) 撮影者との契約で偏りやすい条項の整え方
解除
理由一方だけが解除でき、賠償も認めない書き方は、バランスを欠く。民法の解除の規定(541条〜543条)に沿って、双方の条件を書く
報酬
理由報酬の定めがないと、中止時の扱いが争いになる。請負なら民法634条、準委任なら648条3項の考え方がある
損害賠償
理由事業者どうしの契約でも、上限のない賠償は、撮影者に過大な負担となる。上限と除外をセットで書く
当日の不出勤
理由記念日の撮影は日取りを動かせない。代替の手配を前提にした連絡の義務を入れる
記念日の撮影は、特定の日時に実施しなければ契約をした目的を達することができない性質があります。そのため、撮影者が当日に撮影できなくなると、撮影会社は、お客様との間で、履行の遅れや不能の問題に直面します。民法542条1項4号は、契約の性質または当事者の意思表示により、特定の日時または一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合に、債務者が履行をしないでその時期を経過したときは、債権者が催告なしに契約を解除できると定めています。撮影会社が、お客様への責任を果たすためには、撮影者との契約に、代替の手配、バックアップの撮影者、連絡の手順を入れておくことが、現実的な備えです。
起きがちなこと
撮影者への委託で起きがちなこと
- 撮影者から受けた許諾が非独占・再許諾なしの書き方で、お客様への許諾が撮影者の許諾の範囲外になっている。
- 著作権の帰属が二者択一の書き方で、権利者が決まらないまま、お客様に許諾している。
- 著作権を譲渡する型で、27条・28条の特掲がなく、お客様の加工の許諾の根拠が不明確になっている。
- 著作者人格権を撮影会社に対してだけ不行使としたため、お客様のSNS投稿や手配先の掲載が、撮影者の人格権の問題になり得る。
- 撮影者との契約が終了したことで、お客様に許諾した利用の根拠が揺らぐ。
- 撮影者が再委託したアシスタントが、データを素材サイトに登録した、または生成AIの学習用に使った。
- 個人の撮影者に委託したのに、書面等の明示がなく、支払期日が、受領から60日を超えて設定されている。
- 解除が撮影会社の側にだけ認められ、撮影者の準備費用の扱いが決まっておらず、中止のたびに争いになる。
よくあるご質問
撮影者に撮影を任せるとき、写真の著作権は誰に置くのがよいですか。
撮影者に残す型と、撮影会社に集める型があり、どちらが正しいとは決まっていません。撮影者に残す型は、お客様への再許諾の権限を契約に明記します。撮影会社に集める型は、翻案権等(著作権法27条・28条)を特掲し、著作者人格権は不行使とし、撮影者の実績掲載を逆向きの許諾として決めます。いずれも、お客様に許諾できる権限を確認できる形にします。
撮影者から利用の許諾を受けていれば、お客様にも自由に使わせてよいですか。
いいえ。利用権は、著作権者の承諾を得ない限り譲渡できず(著作権法63条3項)、再許諾も契約で認められていなければ当然にはできないと考えるのが安全です。撮影者との契約に、お客様に個人の記念としての利用を許諾できる旨と、その範囲を書いておきます。
著作者人格権は「放棄」させる書き方でよいですか。
著作者人格権は一身に専属し、譲渡できません(著作権法59条)。全面的な放棄の有効性には疑問があるため、「行使しない」という不行使の約束とするのが一般的です。相手方に、撮影会社だけでなく、お客様や手配先など、撮影会社から利用を認められた者を含めます。
個人の撮影者に委託するとき、法律上、何に気をつければよいですか。
相手方が従業員を使用しない個人や一人法人であれば、フリーランス法(書面等での明示は3条、支払期日は4条)の確認が必要です。委託する側と受託する側の規模によっては、取適法(明示は4条、支払期日は3条)の確認も必要です。どちらも受領日から60日以内に支払期日を定めることが基本で、フリーランス法5条の禁止行為は1か月以上の業務委託が対象です。撮影がどの類型に当たるかは、条文と所管官庁の資料で確認が必要です。
撮影者がデータを素材サイトに登録したり、生成AIに学習させたりしないようにするには。
契約に、データの使用目的を本件業務に限ること、素材販売サイトやストックフォトへの登録の禁止、生成AIの学習用として入力または提供することの禁止を書きます。再委託先にも同じ義務を負わせ、業務の終了後のデータの消去または返却の期限と、確認の方法も定めます。個人データを含むため、委託先の監督の問題でもあります(個人情報保護法25条)。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の撮影サービスへの当てはめは、プランの内容や手配先との契約の仕組み、申込みの経緯によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や契約を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索で確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 消費者庁 / 個人情報保護委員会 / 文化庁